貪欲とは、広い意味では形、音、匂い、味、触感等、一切の現象に対する執着であり、狭い意味では男女間における情愛の執着を指します。

チベットでは、貪欲は若い男女の異性に対する欲情·執着とされています。しかし、実際には、若者だけが欲情を持っているという訳ではありません。風前の灯のように、余命いくばくもない老人でも、若い頃から特に性欲の強い者は、身体は老いても、その欲情は未だに烈火の如く燃え盛っています。チベットの諺にもあるように、「老い惚れの身になったにもかかわらず、相変わらず美しい娘に惚れる」ということです。

男性と女性が互いに惹かれ合う欲情は、多くの苦しみの源となります。実際によく観察してみれば、男女問わず、身体の全ては空性であり、無常であることが分かります。そうした取るに足らないものに、一体何を求めるのでしょうか?

三界の衆生全てを惑わし、解脱から遠ざからせるのが、まさしくこの貪欲·欲情の魔です。欲情多き人間は、悟り·阿羅漢の境地に近づくことはおろか、極楽世界に生まれ変わることすら叶いません。

一例をあげましょう。ある男性が1人の女性に恋焦がれている時、突然亡くなりました。この時、この男性は決して極楽世界の功徳を思い出すことができず、ましてや、阿弥陀仏を観想し祈りを捧げることもありませんでした。代わりに、相手の女性に強い執着を抱えたまま死を迎え、強い欲情を抱えたまま、バルドーに入ります。その結果として、来世は女性の体に棲みつく虫として生まれる可能性が十分にあります。

女性は基本的に欲深いと多くの経典の中で説かれていますが、時に男性の欲情も想像を絶するほど強力なものです。貪欲は上·中·下の3ランクに分かれます。かつて 釈迦牟尼仏陀は、弟子の中でナンダがとりわけ欲情に囚われていると仰ったことがあります。

男性であれ、女性であれ、貪欲·欲情から離れられない者は、誰しも苦しみの鎖に縛られることになり、心穏やかで平穏な生活を決して手に入れることができないのです。


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